失われた30年ー第2回

失われた30年―2

今回はバブルとはいったい何か、また過去には事例があるのかについて調べてみようと思います。

2.バブルとは何か

株、土地、絵画、宝石など各種の資産価格が、投機目的で実態価格と乖離して異常に上がり続け、それらの資産額が膨らみ、大きな評価益が発生しているかのように見える状態のことです。

実態価格との乖離が大きくなりすぎると、突然価格が必ず暴落しバブルが弾け崩壊し、投機した人は勿論、一般大衆まで巻き込まれた状態になり社会全体で膨大な損失を被ります。

出典:金融大学ホームページ

3.過去にはどのような例があるか

過去には多くのバブルが発生し、崩壊しました。その中で中世のヨーロッパで発生したバブルの走りと言える代表的な例を下記します、いずれも商業が発達し始めたオランダ、フランス、イギリスで発生しました。


(1)1637年のオランダのチューリップバブル(変位種のチューリップに人気殺到)

当時の突然変異による珍しいチューリップ

出典:ウィッキペディア

珍しい種類のチューリップ(実は、病気による突然変異)が登場しその球根に人気が殺到し、投機対象になりました。

ピーク時には球根1個の値段が当時の熟練技術者の年収の10倍程度まで高騰したと言われています。

チューリップ関連業者以外の一般大衆にまで投機が広がりました。現物取引以外に先物取引やオプション取引の原型みたいなものが酒場で盛んに行われたと言われています。

しかしある日「もう誰もそのチューリップは買わない」と言われ始め、たちまちその球根の価格が暴落し多くの人々が財産を無くしたと言われています。

この突然変異種のチューリップは球根の株分けでは伝わるものの、種には伝わらず、現在には伝承されていません。

当時の詳しい数値データは残存しておらず、正確な情報は不明なようです。


(2)18世紀のフランスのミシシピー計画とイギリスの南海泡沫事件(膨大な国債の帳消し術)

ルイ14世 ルイ15世 ジョン・ロー 

出典: ウィッキペディア

当時ルイ15世時代のフランスはその前のルイ14世時代のベルサイユ宮殿造営等大規模な支出や、ヨーロッパ最強の陸軍力を駆使した周辺国への侵攻等による戦争費用により国家予算の10年分という膨大な財政赤字を抱えており、それは国債で賄っていました。しかし、その国債は国家が借金返済不能なため、売買価格が額面の1/5以下に下がっていました。国の財政は完全に破綻状態でした。

この状況下、救世主が現れます。スコットランド出身のジョン・ローはフランス王室にある策を持って接近しました。その策とは、財政の窮状を救うために、当時植民地であったアメリカのミシシピー川流域の開発を行う国営ミシシピー会社がミシシピー川流域を素晴らしい土地になるように開発するとの偽情報を国内に広く流布し株価を釣り上げ、国債を回収するというものでした。

この海の向こうの開発偽情報によりミシシピー会社の株は暴騰。更に、その株の購入は通貨以外に国債、しかも元の額面価格として使用できるとしました。

国民は手持ちの国債は額面の1/5しか価値が無いにも関わらず、ミシシピー会社の株を買う際には元の額面通りの価値として使用できたため、こぞって国債でミシシピー会社の株を購入した。もちろん通貨でもミシシピー会社の株を多数の人々も購入。

ミシシピー会社は国債購入にあたり、有利な条件で新株発行の権限を与えられていました。
更にジョン・ローは紙幣を多量に発行し、金余りの状態にしてミシシピー会社の株購入を煽りました。

そのため、ミシシピー会社の株価は約20倍に暴騰、しかも国債を買い戻す形となったため、国の借金も帳消しになりました。この時のミシシピー会社の株式の時価総額は国家予算の30年分に相当しました。

やがて、ミシシピー川流域開発は嘘であることがバレ、バブルは崩壊、株価は暴落し、多くの人々が財産を失った。しかし、国債は国営のミシシピー会社に買い戻されたために帳消しになり、国(国王)の借金は無くなりました。殆ど国家ぐるみの詐欺と言える事件でした。その後ジョン・ローは国外に逃亡しました。

この事件は後のフランス革命(1789年)の遠因となったと言われています。

  同時代のイギリスでも同じような事件がおこりました。当時イギリスも軍事支出が膨大であり、それを国債で賄っておりましたが、ご多分に漏れずその処理に苦慮していました。

この膨大な国債を帳消しにするために、国営会社(南海会社)の株を高騰させ、その株と国債を一見有利な条件で交換し、更には有利な条件で新株を発行していました。その後国営会社の株は大暴落となりました、フランスの例に酷似しています。この事件がバブル(泡沫)の語源になったと言われています。

いずれも株価が異常に高騰した為に発生したバブルでした。

オランダの例は通常の経済活動の中で発生しましたが、フランスやイギリスでの例は国家が国営会社の株価を意図的に釣り上げて、国の借金(国債)を吸い上げてしまうという悪辣な手段でした、当時の国家はやりたい放題のように見えます。現代ではそのような事が無いとよいのですが。

次回は失われた30のきっかけになった今回のバブルについて調べてみます。

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